かしネコ

本文

上須よしか

短編

第四話

はじめまして、上須よしかといいます。《雑巾》をしています。


あの日唐突に『戦争』が始まって、お父さんも、お母さんも、お姉ちゃんとも離ればなれになりました。生きているのか、死んでいるのかすらわかりません。

この国はあっという間に負けて、わたしの知っていた明るく賑やかな街は、酷く荒れすさんでしまいました。

ひとりだけで生きていくことになってから三ヶ月。十一歳の誕生日に、市場で競りにかけられていたわたしを買って下さったのが、今の主さまです。

主さまのお屋敷は、郊外の緑豊かな自然に囲まれた、古い大きな洋館です。窓から見える裏山も、主さまが所有されています。あまり学のないわたしにはわかりませんが、主さまは大層ご立派なお仕事をされていて、今のこの国で、これほど裕福で安らかな暮らしを送れる方は数えるほどもいないそうです。


わたしがここで働くようになって、もうすぐ二年になります。今日も、張り切って《雑巾》としての務めを果たしたいと思います。


朝。よしかは薄暗い地下倉庫で目覚める。

隅の蛇口で顔を洗っていると、一階へと繋がる階段から足音が聞こえた。戸を開いて、住み込みの使用人が朝食のトレイを手に倉庫へと入ってくる。《雑巾》とはいえ、ひとの身体である以上食事は欠かせない。よしかは主人や使用人に面倒をかけて申し訳ないと思いながら、感謝の念も込めて朝食に手を付ける。

蜂蜜の塗られたトーストに、色とりどりのサラダ。温かいミルクは彼女のお気に入りだ。夏でも涼しいこの倉庫は、全裸の彼女には少し肌寒いから。

食べている間、使用人はずっと彼女の側に立っている。待たせるまいと、よしかはできる限り急いで、しかしよく噛んで胃に納める。以前無理な食べ方をして、仕事中に吐き出してしまったこともあった。

空になったトレイと共に、使用人は彼女の首根っこを掴み、引き摺るようにしながら階段を上っていく。よしかも、尻を突き出したいささか間の抜けた千鳥足で、それに続く。

彼女が「ごちそうさま」を言うことはない。もちろん、「いただきます」もなかった。彼女は『道具』なので、言葉は必要ないものだと躾けられている。使用人も話しかけることはしない。


一階の大広間では、開け放たれた窓の両端で、手首を縛り吊るされた《カーテン》たちが連なっていた。

爽やかに晴れたよい天気だったが、風が強く、彼女たちの細い腰が波打つように揺れる。

上須よしかが《雑巾》であるように、この屋敷ではたくさんの少女が日用品、家財道具、嗜好品等として生まれたままの姿で『使用』されている。多くは、主人が街で拾った、身寄りのない子供だ。

寝床はよしかと同じ地下倉庫だが、与えられた役目によって生活のサイクルが違うので、彼女も絶対数を把握できてはいない。言葉を持たないもの同士交流もないので、互いの名前を知ることもない。


今日の『お務め』は二階。すでにそこかしこで『道具』を使っての掃除が始められていた。

よしかも使用人によって頭を板張りの床と壁の隙間に押し付けられて、《モップ》や《箒》では取りきれなかった細かいゴミを、伸ばした舌で丹念に拭き取っていく。口内を舞う埃でむせ返らないように、細心の注意を払いながら。最後に口をゆすぎはするが、口に含んだゴミのほとんどは飲み込んでしまう。


廊下を半分ほど拭き終わったとき、ごずん——という大きな鈍い音が屋敷中に響いた。

彼女の十メートルほど向こうの床の上に、うつぶせに倒れている人影。つい先ほどまで、ひとの背丈ほどの台座の上に直立して、歳の割に豊かな乳房で花束を挟んでいた《花瓶》だった。

開け放たれた窓から吹き込んだ強風に煽られ、バランスを崩し足を踏み外したのだろう。頭からは夥しい量の血液が流れ、身体は不自然なほどに大きく痙攣している。

しかし使用人たちは、特に驚いた様子もなくこなれた仕草で《花瓶》を引き摺っていった。

残された血溜まりは、よしかがすべて片付けた。錆びたドアノブと同じ味が、彼女の口腔に広がっていった。


『お務め』を終え、夕食も済ませしばらくたった頃。日の光が差し込まない地下倉庫でも、空気がひやりと大人しくなると、夜が訪れたのだとわかる。

よしかの元に再び使用人が訪れ、朝と同じように首根っこを掴んで地上へと持ち出していった。

地下を含めて四階建ての屋敷の、最上階。その最奥にある大きな扉の前で使用人は立ち止まった。ゆっくりと二度、ノックを繰り返し、

「今宵の《人形》をお持ち致しました」

機械的な台詞が扉に吸い込まれ、数拍置いて、声が返ってくる。

「入っておいで」

「失礼します」

ドアノブを回し、よしかを引いて部屋の中へ足を踏み入れる。

目の前には、紅いソファに上品に掛けた初老の男性。

「御苦労さま。下がって構わないよ」

「かしこまりました。それでは、お休みなさいませ」

一礼すると、使用人はよしかを置いて、ひとり部屋を後にした。

「よしか君、だったね。今日もよろしく」

男性は残された《人形》に語りかける。

「——はい。何なりとお申し付けください、主さま」

それが、彼女が三週間ぶりに口にした言葉だった。


主人の寝室には専用の浴室も併設されている。連れ立って入った脱衣場に、主人の柔らかい声が響いた。

「言葉はまだ忘れていないようだね」

「戴いた日記帳の、おかげだと思います」

彼女たち『道具』も、《人形》として主人と床を共にする夜だけは、例外的に会話を許されるのだ。

「それは何よりだ」

微笑んで、自らのシャツのボタンに手をかける。よしかは反射的に腕を伸ばした。

「服くらいは、自分で脱げるさ」

主人が首を小さく振って制する。

「もっ、申し訳ありません」

「謝ることではないよ。少し待っていてくれ」

よしかは半歩退いて、主人が衣服を脱いでいくのを静かに待った。『道具』は自発的に動いてはならない。機能を求められたときだけ、行動する。

明かりに照らされた主人の肉体は、年齢に不釣り合いなほど逞しかった。

「さあ、入ろうか。身体を洗ってあげよう」

そう言って、主人はよしかに手を差し伸べる。

主人と入った三週間ぶりの風呂は、彼女にとってとても心地よいものだった。


主人はバスローブを身にまとい、よしかは当然のように全裸のまま、寝室へと向かった。

キングサイズのベッドの真っ白なシーツの上に、人影がひとつ、見えた。

「あれは……」

見覚えのある顔に、よしかは息を飲む。

「知っているのかい」

「はい。わたしが、後片付けをしました」

仰向けに横たわっているのは、昼間の《花瓶》。瞼は開いたまま、眼は淡々と天井を向き、その全身には頭からつま先まで、余すところなく白濁した粘液がこびりついていた。

「出血は酷かったようだが、傷自体は大したことはなくてね。すぐに塞がったよ」

主人がとつとつと語る。

「身体は無事だったが、打ち所が悪かったんだろう。心が、壊れてしまったみたいだ」

よしかは、テレビの中の世界だけで知っていた言葉を思い出した。

「植物状態、ですか」

「そういうことになるね」

少女の胸は、繰り返す呼吸でわずかに規則正しく上下している。

「壊れた『道具』は捨てなければならない。——でも、こんなに綺麗なままだから、少し惜しくなってしまってね。こうして最後に愛でていたんだよ」

「彼女も、喜んでいると思います」

思ったままのことを口にすると、

「少し、やりすぎてしまったがね」

主人が苦笑を漏らした。

自分も壊れたら、こんな風に愛して頂けるのだろうか。そう考えながらじっと《花瓶》を見つめるよしかを後ろから抱きすくめて、主人は耳元で囁きかける。

「この子を綺麗にしてやってくれないか」


ベッドは古く、体重の軽いよしかでも上に乗ると軋んで耳障りな音を上げた。主人は傍らで椅子に掛け、じっとふたりの少女を見つめている。よしかは四つん這いで、《花瓶》に折り重なり覆い被さるようにその顔を覗き込んだ。

よしかよりも少しだけ年上、十五歳ほどだろうか。同じ黒い髪を持つが、短く切り揃えられたよしかとは対照的に、腰まで美しく伸びていた。外国の血が混じっているのか、瞳は青く澄み、よしかの顔をくっきりと映し出した。

更に顔を寄せると、主人が放った精液の香りが鼻腔をくすぐった。

「んっ」

瞳を閉じ、ゆっくりと口付ける。唇は柔らかく、仄かに熱を帯びていて、よしかは彼女が壊れていることを忘れてしまいそうになった。

「ふぁ」

舌を伸ばし、口を割り開いて、つるんとした前歯をなぞる。独特の苦味。恐らく、主人は彼女の口の中にも大量の精を注ぎ込んだのだろう。よしかは少し、彼女のことが羨ましくなった。

「んむ、んっ、ふぅ……むぅゥ」

犬歯の先端も、奥の歯茎も、舌の付け根の裏側も。彼女の口腔をねぶり、唇同士をより密着させて、精液をこそぎとり余さず啜る。ちゅうちゅう、じゅるる——と、粘ついた水音が部屋に響いた。

「んぷっ」

口内の『掃除』を一通り終えて、次は顔。丁寧に、舐めとった精液を味わいながら。

「おいし……」

髪の毛は一房ずつ手に取り、半開きの唇をあてがい、ハモニカを吹くように顔をずらして、自らの口に精液を溜め込んでいく。

「ぅふん……っ」

続いて首筋、肩、腕と順繰りに。赤い舌が乳房をくるりとなぞって、乳首に達したとき、

「——?」

ふと、よしかは違和感を覚えた。見間違いかと思いながら、もう一度、乳首を舌先でつつく。

ぴくん、と小さく跳ねる彼女の身体。規則的に呼吸を繰り返しているはずの胸が、わずかにリズムを乱し震えていた。まるで、身悶えているかのように。

「これって——」

首を上げ、再び彼女の顔を覗く。やはり、その瞳は依然として生気を失ったまま虚空を見つめている。

それでも、肉体はまだ確かに生きていて、快楽を受け止めている。よしかの舌で、感じている。

不意に、奇妙な好奇心が鎌首をもたげよしかを突き動かした。

「……っ」

乳房に顔をうずめ、すぼめた唇を押し当てて、きつく吸い上げる。小気味いい音と共に真白い肌に赤い跡が刻まれていく。

「んっ、んッ、んふっ——」

しるしを灯される度に彼女の身体は打ち震え、まろやかな弧を描くふたつの半球がたおやかに揺れる。桃色の突起がぷっくり膨れ、天を向いて硬く自己主張を始めた。

「……きれい……」

背中に腕を回し抱きしめて、乳首にしゃぶりつく。薄い腹と腹が密着し、その隙間にあった精液が糸を引くが、よしかは構わなかった。

「ぁっ、あむっ……んふぁ♥」

次第に、彼女の肌全体が朱に染まる。体温も上がっているようだ。気付けばよしかも彼女も、じっとりと汗ばんでいた。

乳房から口を離し、後退りながら舌先を下腹部へと下ろしていった。臍のすじ道を縦断し、細く柔らかい陰毛の林を抜け、小高い肉の丘を超えて——

びくンっ。

包皮にくるまれた可愛らしいクリトリスに達した瞬間、彼女の腰は大きく踊り、跳ね上がっていた。


新しい玩具を手に入れた子供のように時を忘れ、よしかは夢中で《花瓶》の肉体を貪り続けた。最初は小さかった彼女の肉の芽も、よしかの執拗な舌責めで様々な粘液にまみれふやけて数倍に肥大し、包皮はまくれその身のすべてを露出させていた。

尚も昂りを抑えられず振り乱れるよしかの尻に、唐突に触れるものがあった。

「んぁ——ッ?」

「お楽しみのところ、申し訳ないね」

主人の両手が薄い尻肉をこね回す。

「君たちを見ていたら我慢できなくなってしまって」

節くれだった指先が食い込み、よしかは熱のこもった吐息を漏らす。

「ふぁぁッ……ああ、申し訳ありま、せん……わたし、すっかりお務めを忘れ……ああぅッ」

指の腹でつまみ上げ、ほぐすように手の平で押し込み、爪先で瑞々しい肌を弾く。

「構わないさ」

主人は既に全裸になっていた。彼もベッドに乗りかかり、ぐいとよしかを背中から抱き上げる。

「その代わり、私も混ぜてくれないかな」

主人の両腕の中にすっぽり納まったよしかは、尻の割れ目に沿うようにまっすぐ立ち上がる、硬い剛直を感じた。

「はい、よろこんで……主さまぁ」

媚びで潤んだ瞳を向け、腰を卑猥にくねらせる。よしかにも既に我慢の限界は訪れていた。

——み゛ぢっ。

「ふぐぁ——ッ!」

合図はなかった。心の準備を整える間もなく、よしかの身体は貫かれた。

「あ゛っ、あぐッ」

主人はよしかの腰を掴み、更に奥へと強引に巨大なペニスを根元までねじ込んでいく。

瞳孔が開き、腕は何かにすがるように弱々しく踊って、空を切った。

「うっ、ぅーッ、ひぎっ」

瞼の端に涙が溜まり、しずくとなって頬を伝う。そして彼女の秘所もまた、赤い涙を幾筋も滴らせていた。幼い肉体に、その肉塊は最早凶器といえるものだった。

「おや、この間の傷が開いてしまったようだ。大丈夫かい」

心配げな口調とは裏腹に、彼は自らの腰をリズミカルに揺らし、よしかの内臓を容赦なく抉った。

「んぐッ、あっ……はっ、はい……あるじさま、の……とってもご立派で……あンっ」

息も絶え絶えによしかは言葉を吐き出す。苦痛で占められた喘ぎ声の中に、少しずつ色が滲んできていた。

「そうか」

主人は更に腰を突き上げて、彼女を責め立てた。

「はぁっ……ふぅッ、んく」

血液と愛液を同時に噴き出して、混ざり合った薄桃色の粘液が主人の陰毛に絡み付く。異様な臭気がベッドの上にたちこめた。

「ぁッ、ん……はっ、あは……あるじさまの、おち○ぽぉ……♥」

痛みが快楽で上書きされたのか、痛みすらも快楽に変わってしまったのか、よしかは涙にひたった顔で恍惚の笑みを漏らす。その様子を、主人は満足げに見つめていた。

「君も、いい顔をするようになったね」

「あっン、ありがとう、ございますぅ……ッ」

まるで糸のもつれた人形劇のように四肢が跳ねる。

「その顔、彼女にも見てもらおうか——」

「ふぇっ?」

不意に、主人が腰を起こし、繋がったままのよしかを押し倒した。慌てたよしかは腕を前方に伸ばし、四つん這いになって——《花瓶》と向き合った。

「あっ……」

物言わぬ彼女の瞳と視線が交差する。そこには、ただ快楽を享受することだけを考えている、ふしだらで淫猥な少女が映っていた。

「これ、が……わたし……——ッ!」

少女の瞳に見入るかしこを、強い衝撃が襲った。

「あひッ、んぁっ、あッ、あるじっ、さまぁ……っ!」

膝立ちで後背位の形をとった主人が、無言でよしかの尻に下半身を叩き付ける。

「んぅ、んッ、あぁんっ♥」

彼も性感が高まってきているのだろう。肉と肉がぶつかり合う音の合間に、荒い鼻息が小刻みによしかの耳に届いてきた。

「きもちイイっ、きもち……ぃいですッ♥」

主人の抽送に合わせて、自らもリズムをとって身体を揺らす。ペニスを包む卑肉も激しく蠢いていた。

「はぅっ、んふッ、ふぅぅん♥」

髪の先から汗が滴り、長い睫毛を伝った涙が落ち、舌先に溜まった唾液が垂れて《花瓶》の顔を汚していく。よしかは突っ伏して、彼女の顔に舌を這わせる。

「んむっ、んんんッ♥」

額、鼻、頬、こめかみ、顎——眼球まで舐め尽くして、再び、少女と口付けを交わした。そのときだった。主人の切羽詰まった声が響いた。

「ああっ、いく、イクよ、よしか君——」

瞬間、大きいペニスが更に膨れ上がり、熱い滾りがよしかを撃ち抜いた。

「んんんんんんーッ!!」

少女と唇を重ねたまま、よしかは身体を打ち震わせ、絶頂に達した。尚も主人のペニスは放出を続け、尋常ではない量の精でよしかの胎内を満たし、溢れさせた。

接合部から滴る精液は、《花瓶》の少女の秘唇へとゆっくり吸い込まれていった。


翌日、使用人さんが荷車に大きな麻袋を積んで、お屋敷から出て行くのを目にしました。

わたしたち『道具』は、壊れたらお屋敷の裏手にある山に捨てられます。そこには、ひとの屍肉を糧にする動物がたくさんいるのだと聞いています。


二階の廊下では、《花瓶》が見覚えのない、新しい女の子に取り替えられていました。

倒れないように使用人さんが工夫したのでしょう。彼女は台座ではなく、壁に逆さに張り付けられ、膣と肛門を、太く束ねられたバラの、棘もそのままの茎で貫かれて血を滲ませていました。

まだ『道具』としての生活を受け入れられていないのか、溢れた涙が絨毯に大きな染みを作り、かすれた嗚咽を廊下に響かせています。わたしと目が合うと、「たすけて」とすがるように語りかけてきました。

もちろん、言葉を返すようなことはしません。何事もなかったように彼女から視線を外し、通り過ぎます。


いよいよ来週は、私の十三歳の誕生日です。今日も、張り切って《雑巾》としての務めを果たしたいと思います。

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