かしネコ

本文

阿南まなこ

短編

第六話

「マナコ、※※※※☆☆☆※※」

蝶を模した大きなリボンが際立つ紫の眼帯。彼女はこの店のオーナー兼トップ嬢。控え室の白い壁に貼られたグラフ表のいちばん上は、彼女の顔写真が常に鎮座している。

名前はなんて言ったっけ——ひとみ。肌や顔立ちを見ても明らかに日本人だけど、日本語は話してくれない。☆☆☆は『御指名』って意味で、わたしが最初に覚えたこの国の言葉。


オーナーの後に続いて、狭く長い廊下を歩く。

わたしがこの国の言葉をほとんど喋れないことを知っているので、二人きりだと彼女が口を開くことはまずない。以前日本語で語りかけてみたけれど、無視されてしまった。もしかしたら生まれはこの国で、日本語は知らないのかもしれない。

肌が透ける黒のベビィドールは全員共通の制服で、ブラ・ショーツの着用は厳禁。だけど靴下やタイツは個々の自由。ちなみにわたしは裸足。脇とアンダーヘアの処理も自由。ちなみにわたしはパイパン(天然)。

オーナーが直々にわたしを連れていくということは、今回の客はお得意さまのあの人なのだろう。


大きなクッションがあるだけのプレイルーム。ここにはベッドもシャワーもない。必要ないから。

「※※※※※※※」

「※※! ※※※※※※!!」

一足先に待っていたのであろう全裸の彼が、オーナーに話しかける。顔も身体もまだ萎びているアレも大きい。声も大きいので、ちょっと耳障り。悪い人ではないのだけど。

「※※※※、※※※※※」

オーナーが部屋を後にした。わたしは深々と彼にお辞儀をして、

「えっと、△△△△△△△△△△」

と言った。△△△△△△△△△△は『よろしくお願いします』って意味。わたしが覚えているふたつめの言葉。

「※※、※※※※※※※※!」

彼の大声が、ふたりきりの個室に響いた。


備え付けの冷蔵庫でキンキンに冷やされた注射器。が二本。

彼はまず薬液が緑色の方を取り出して、わたしの首根っこを掴んだ。申し合わせたようにわたしは口を開けて、舌を突き出す。

その先端に、彼は針を無遠慮に突き立てた。歯医者さんにされた麻酔より何倍も痛いけれど、これもお仕事のうちなので我慢する。

一滴残らず薬液を注ぎ込んだら、用意してあったギャグボールを唇にあてがう。なんでも昔、プレイ中に自分の舌を噛み切って、客にも店にもたいへん迷惑をかけた子がいたからだと、ケミカルな艶の赤エナメル眼帯の先輩に身振り手振りで教えてもらった。

次第に頭が熱くぼうっとしてきて、身体も思うように動かなくなってくる。わたしはクッションに思い切り尻もちをついた。

「※※※、※※※※※※※※※※※※※※※※!!」

もやがかかった視界のまんなかで、彼が自分のアレに残った赤色の注射を打っているのが見えた。アレはみるみる大きさを増し、ただでさえ大きい彼の、いつもの勃起のさらに数倍にまで膨れあがった。

「※※※※!?」

三日月みたいに反り返って天井を指しているアレを揺らしながら、彼が誇らしげに問いかける。よくわからないけど、わたしは熱っぽい首をかしげて、熱っぽい視線をソレに送って、熱っぽく火照った顔で微笑んだ。


ふたり向き合って、彼がわたしの後頭部へ腕を回す。湿った吐息が鼻すじを撫でて、わたしの頭をよりいっそうクラクラさせた。

ミント地に黒いレースがあしらわれた眼帯の、結び目がほどかれて、ゆっくりと床に落ちる。前髪をそっとかきあげて、ぽっかりとあいた左の眼窩が空気にさらされた。

「※※※※※※※、※※、※※※※!!」

彼が興奮している。わたしは少しだけ恥ずかしくなってまつ毛を震わせる。

店には孔の中をアソコみたいに改造しているひともいるけど、わたしは最低限の加工しか施していない。それがウリだから。

「※※※! ※※※※※※※※!!」

立ち上がり、大きな両手でわたしの頭を持ち上げて、アレの先っぽに孔の入り口をあてがう。

「※※※※※※! ※※※※※※!?」

掴んだ頭を、自らの股間に押し付けた。ごりり、ずりゅんっ——そんな音が響いた気がした。

「※※※、※※、※※※※※!!」

眼孔の直径を明らかに超えた太さの異物が進入して、骨が軋む。きっと耐えきれないほどの痛みが頭を駆けめぐっているのだろう。だけど、注射を打ったいまのわたしには、むず痒い疼きしか感じることはできない。

「ぁ、ふぁ——」

「※※※! ※※※! ※※※!」

彼自身はあまり腰を動かさない。ラッコみたいに腕を揺すり、わたしの頭を前後に振って孔でアレをしごきたてる。口の端から涎が飛び散った。本当に物のような扱いだけれど、実は、こういうのってあまり嫌いではないし、むしろ好きだから続けられている仕事なんだと思う。

薬がどんどん回ってきていて、もうわたしの意思で動かせる部位はあまり残っていない。首につられて半ば腰の浮いた上半身ががくがくと揺れる。乳房も弾んで、さらさらのベビィドールに乳首がこすれ硬くなった。どんなにわずかな刺激でも、薬がとろけてしまうような快楽に仕立てあげてくれる。

「※※※※※※※※※※※!! ※※!」

眼窩の奥をアレで何度も何度も叩かれる。頭蓋骨はボウル、中身はジャガイモ。潰されてペースト状になった脳みそが、そのうち後頭部を突き破って溢れてくるんじゃないかって気もしてくる。そんな妄想にさえ、わたしは片目で恍惚とした笑みを浮かべた。

「※! ※、※、※、※、※、」

彼が上ずった声を上げる。絶頂が近い。彼は腕をより一層振り乱し、わたしはされるがままで、そして、全力を込めた最後の——

「※※※※※※※※※※※※※※※※※!!」

びゅぶぶぶぅうううううううーッ!!

長い長い射精。真っ暗な瞳の奥に熱い奔流を注ぎ込まれて、わたしもまた無言で絶頂していた。クッションが温かい水気にひたっていく。いけない。今日の洗濯当番は——ああ、同期の、緑と白のストライプ柄の眼帯の子。怒られるかな。


薬が抜けず、自分の小水で汚れたクッションの上に横たわるわたしを置いて、彼は満足げに部屋を去っていった。

立てるようになるにはあと一時間ほどか。わたしは右目で、脱ぎ捨てられた自分の眼帯を探していた。

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